不登校の根本原因は体の中に?【知られざる副腎疲労症候群】

要約

子ども副腎疲労症候群とは?」について、詳しくご説明していきます。

  • 副腎疲労症候群とは?
  • どんな症状が出るの?
  • 原因:どうしてこんなふうになってしまったの?
  • 診断するための検査はあるの?
  • 治療はどんなことをするの?
  • 学校への登校は?

お子さんが学校に行けなくなってしまった場合、なぜそうなってしまったのか不登校の原因・理由がわからない、どうしたら良いのか非常に悩みます。この記事は、お子さんが不登校になった原因や理由を理解するのに苦労している親御さんに向けて書いています。

不登校のお子さんの中には、副腎疲労症候群になっているために学校に行けない場合があります。
しかし、副腎疲労症候群は、一般的にはあまり知られていません。

今回は、副腎疲労症候群について、わかりやすく解説します。
副腎疲労症候群への理解を深めることで、お子さんが笑顔で本当にやりたいことを楽しめる日々を取り戻すことを願って、この記事を書いています。

また、私は慢性疲労外来で、朝起きられないお子さんをみています。その経験も踏まえて、具体的にお伝えしていきます。

どうかお一人で悩まず、この記事を通してお役に立てれば幸いです。

副腎疲労症候群を起こして、学校に行けないお子さん

不登校の根本原因は体の中に?【知られざる副腎疲労症候群】

不登校のお子さんが年々増えています。

親御さんとしては、「なぜ学校に行けないのだろうか?」「このまま学校に行けなくなってしまったらどうしよう」、「勉強も遅れてしまう」、「いつまで続くのだろう?このままで大丈夫なのかしら?」といろいろ心配になってしまいます。

昔と違って、勉強や友達づくりなどはリモートで行えるような時代になってきました。しかし、学生時代の体を動かして五感で感じたリアルな体験は、後々まで思い出に深く残りますし、一緒にそれらを体験した友達との絆も強くなります。

もし、学校が嫌いなわけではないけれど行けない、いく元気が出ないという場合、何とかそれらを解消して、楽しい体験をまたできるようにさせてあげたいですね。

学校に行けない理由が、いじめや学校の先生と合わないというわけでもなく、特に理由が見つからない場合は、もしかしたら副腎疲労症候群も原因の1つとして候補にあげて良いかもしれません。

令和3年度の文部科学省の調査では、不登校の原因として

  • 「無気力、不安」49.7%、
  • 「いじめを除く友人関係をめぐる問題」11.5%
  • 「生活リズムの乱れ、あそび、非行」11.0%
     での順で多いという結果です。

一方、副腎疲労症候群でよくみられる症状には、

  • 「朝起きられない(生活リズムの乱れ)」
  • 「だるくてやる気が起きない(無気力)」
  • 「今まで興味があったことをしなくなる(無気力)」
  • 「理由なく不安になる」
    などがあります。

こうしてみると、文部科学省の調査の原因に見られる「無気力、不安」と「生活リズムの乱れ」は、副腎疲労症候群の症状に当てはまります。

ですから、原因・理由がわからない不登校のお子さんの中には、副腎疲労症候群のお子さんがかなりいる可能性があります。

ご本人は学校に行きたいのに、副腎疲労症候群を起こしているために、学校に行く元気が出ないというお子さんを外来で診てきました。

副腎疲労症候群でも症状が軽い場合は、生活習慣の改善で、また登校できるようになる場合があります。

できることなら、ころころ笑いながら色々なことを楽しく体験する毎日をお子さんに取り戻させてあげたいです。友達との思い出もたくさん作って欲しいです。

この記事では、不登校の原因の1つになりうる副腎疲労症候群とは、どんなものかについてお伝えいたします。

子どもの副腎疲労症候群とは

副腎とは腰の上のあたりにある臓器で、生命の維持に関わる重要なホルモンを作っています。副腎のホルモンは何種類もあり、色々な働きをしています。その働きの1つにストレスへの対応があり、副腎ホルモンは「ストレスホルモン」とも呼ばれています。

ストレスがかかると脳がストレスを感じて、脳から副腎に刺激が送られ、副腎ホルモンが作り出されます。それにより、全身の神経系、免疫系、ホルモン系が反応して、ストレスにさらされても、うまく対応できるようにしています。

副腎疲労症候群とは、ストレスがずっと長く続いたり、すごく強烈なストレスが加わった場合などに起こります。

ストレスの量が多すぎることで、ストレスに見合う量の副腎ホルモンを作れなくなってしまうことで起こります。

また、ストレスにより、副腎ホルモンが働くべき場所で働けない・効果を発揮できない状態になったりします。

学校生活でストレスといえば、友達関係(SNSなどで縛られる友人関係、スクールカーストなど)、受験勉強、先生との関係などの精神的なストレスが思い浮かびます。

しかし、それ以外にも、部活動や習い事の過酷な練習(運動過多)もストレスに入ります。

他に、気付きにくいストレスとして挙げられるのが、食品添加物、防腐剤、農薬、魚介類に含まれる水銀やヒ素、生活用品に含まれる化学物質や薬品、環境ホルモンなです。

これらは、腸内細菌のバランスを悪化させたり、体内の細胞で行われる正常な反応を妨げたりします。

さらに、コロナ感染症・インフルエンザ・溶連菌・普通の風邪などの感染症、喘息、アトピー、花粉症、副鼻腔炎、歯周病なども、体にとってはストレスになります。

ストレスの数が多かったり、数が少なくても1つのストレスが強烈な場合(家族やペットとの死別、親御さんの離婚など)も、副腎疲労症候群は起こります。

現代のお子さんは、知らず知らずのうちに上記のいろいろなストレスが重なって副腎疲労症候群を起こしています。

➡︎【慢性疲労・不登校の原因】ストレス対応ホルモンの不足とは?

➡︎「ストレス対応ホルモンの不足」なぜ起こる?【だるさ・不登校の根本原因】

どんな症状が出るの?

子どもは本来疲れ知らずで、飛び回っているものです。

しかし、副腎疲労症候群のお子さんは、強いストレスや長引くストレスにより、ホルモンのバランスの乱れ(脳と副腎のホルモン連携の異常)、ストレスが多すぎるため副腎ホルモンの(相対的な)不足を起こすことが原因で、下記のようなさまざまな症状が起こってきます。

疲れやすく、寝て休んでも疲れが取れず、朝起きられなくなります。「疲れた」「だるい」としょっちゅう言います。

朝、無理やり親御さんに起こしてもらって、頑張ってなんとか学校に行こうとするとのですが、食欲がなかったり、気持ちが悪かったり、頭痛や腹痛が出てきたりします。

午前中は具合が悪くてグタグタしていることが多く、お昼頃から具合が良くなってきます。

しかし、ご飯を食べた後、抵抗できない強い睡魔に襲われ、食後にまた眠ってしまうこともあります。ご飯に限らず、お菓子を食べた後など、何か食べた後、どうにも耐えられない強い眠気がくることもあります。

そんな場合の昼寝の時は、宅急便屋さんや妹や弟が学校から帰宅し玄関のチャイムを鳴らしても、熟睡していて本人には全く聞こえず、応対できなかったりします。

午後になると調子が良くなり、近所の友達と遊べるくらいに元気になりますが、遊んだ後は、急に疲れが出てきて、ゴロゴロしたりします。

遊びに出かけたり何かするにしても、休んで充電した電池の容量が普通のお子さんより小さく、すぐに電池切れを起こしてしまい、また充電するのに時間がかかります。

普通のお子さんの電池が馬力があり長持ちする大きい単1電池だとすると、副腎疲労のお子さんは馬力がなく、すぐに電気が切れてしまう小さな単3電池で体を動かしているイメージです。

夕方、甘いものが無性に欲しくなったり、元気がなくなってきて、夕方に昼寝をしたくなったりすることもあります。

夜になると朝より調子が良くなり、自分の好きなことならできるくらいの体調となるので、ゲーム、ネットサーフィン、趣味、好きな科目の勉強などをします。

しかし、苦手なことや頑張りが必要なことをやるほどの元気はないので、苦手な科目の勉強や、何か新しい趣味、複雑なややこしい解説を読んで何かやるようなことはできません。

夜は少し調子が良くなるので、「明日は学校に行ってみる」と言ったりするのですが、翌日、登校する時間になると具合が悪くなったりします。

些細なことで、イライラしたり、落ち込みがひどくなったり、キレやすくなったりします。

ぼーっとして頭が働かなくなるので、勉強や習い事の効率が今までより落ちます。ケアレスミスも多くなったりします。

本当は学校に行きたいのに行けないことで自分はダメな人間だと思い悩んだり、

家族から学校に行けないことについて、色々聞かれたり言われたりすることで傷ついたりして、

精神的に追い込まれたりすることがあります。それがストレスで、症状が悪化することもあります。

頑張り屋のお子さんの場合、電池の充電が簡単にできなくなるギリギリまで頑張り、風邪などの発熱の後や、テストや受験をやり切った後などに急にパタリと動けなくなってしまったりします。

より症状が進んでしまうと、

朝11時くらいまで目が覚めない。カーテンを開けて太陽の光が当たるようにしても、ゆすり起こしても起きられなくなったりします(場合によっては昼の1時くらいまで寝ている)。

起き上がろうとすると立ちくらみが起こり、フラフラします。
起きた時から強い頭痛や吐き気がしたりします。

吐き気などのために、食べ物をお腹が受け付けず、食べるものが偏ってきます。

消化しやすい、パンや麺類、甘いお菓子などを好んで食べるようになり、お肉やお魚、卵などのタンパク質のおかずがあまり食べられなくなってきます。

胃腸があまり働かなくなってきて、便秘や下痢を起こしやすくなります。

女の子は、生理に関係する症状が、より強くなります。
生理前に、下っ腹の痛み、むくみ、不機嫌、怒りっぽさ、情緒不安定、頭痛、だるさなどの月経前症候群(PMS)の症状が悪化してきます。
生理不順や生理が止まってしまうこともあります。

ちょくちょく何か食べていないと元気が出なくなったり、気分が変わりやすくなったりします。

食事を取りそびれたり、抜いたりすると気分が悪くなリます。

疲労感が強くなり、お風呂に入るのも面倒になったり、入るにしても、お湯に浸かると疲れるのでシャワーだけで済ましたりします。

夜、疲れていて早く眠ろうとするけれど、目が冴えてしまって眠れなくなったりします。そして、眠りに入っても、眠りが浅く、長くは眠れず途中で目が覚めてしまったりすることもあります。

塩や塩分の多い食べ物を好むようになリます。ポテトチップを食べる頻度が増えたりします。

甘い食べ物(お菓子、ケーキ、菓子パン、ドーナツ、チョコレート、ドライフルーツ、デザート)が無性に欲しくなることもよくみられます。

風邪をひきやすくなったり、アレルギー症状(花粉症、湿疹、アトピー、喘息)を起こしやすくなったりします。

強いプレッシャーやストレスを受けた後は、たいてい横になったりして休養が必要になります。

緊張する場面ではないのに、勝手に気持ちが緊張してしまったり、理由なく不安になったりすることが多くなります。

体を動かすために、コーヒーやカフェインが入った飲み物を多く飲むようになることもあります。

➡︎お子さんの副腎疲労症候群 チェックリスト

原因:どうしてこんなふうになってしまったの?

受験勉強や遠方への通学、厳しいまたは激しい練習を強いられる部活動や習い事、クラス内で生じるスクールカースト、先生との関係、自分の居場所や理解者がいないことなどのストレスがお子さんには起こりうると考えられます。

そのようなストレスのほかに、普段の食事の中に含まれる食品添加物や農薬、保存料、防腐剤、生活用品の中の塗料や接着剤、柔軟剤や掃除用洗剤などの中のさまざまな化学物質の1つ1つが、体のなかで反応を起こし、体の正常な機能への負担(ストレス)になっている場合があります。

それに加えて

現代のお子さんは、30年前、40年前に生まれた赤ちゃんには検出されなかった化学物質をお母さんから胎盤を通してもらってきています。

昔は無かった体の機能を妨げる化学物質を、生まれながらに背負って生まれてきています。

現在は毒性のため使用禁止になったPCBやDDTも、今日生まれた赤ちゃんから検出されるそうです。

数種類のストレスが積み重なり、
脳と副腎で作るホルモンのバランスの乱れ・副腎ホルモンの相対的な不足や、胃腸の働きも悪くなってくることも加わり、食べ物からエネルギーを作り出すのが上手くできなくなってきます。

さらに、脳と副腎のホルモンのバランスの乱れに引き続いて起こる体の反応によって、自分の意思とは無関係に、巨大な敵と戦う時のような緊張状態(テンパった状態)になってしまいます。

副腎疲労症候群が長引いてくると、心と体が、常に緩くテンパっている状態に勝手になってしまいます。これは自分の気持ちで制御できないです。

ですので、
本人にとっては、学校に行くのは、
猛獣がいつ襲ってくるかわからないジャングルに入っていくような感じになります。

学校では、門をくぐってからすぐに予想がつかないことが次々に起こります。

咄嗟の判断で次々に対応して、受け答えや行動していく必要があります。場の空気を読み、気を利かせた会話が望まれます。

帰宅後もSNS上での付き合いがあるかもしれません。副腎疲労症候群まではいかないお子さんでも、中には神経をすり減らして学校生活をしている場合もあります。

心と体がガチガチの緊張状態で、しかも頭の回転もぼやっとしてしまう副腎疲労症候群の状態だと、このような場所でそつなく色々なことをこなしていくのは難しいです。数時間いるだけでも非常に消耗します。

また、胃腸が働かなくなるので、吐き気、腹痛、下痢、便秘、お腹が張って苦しいなどの症状が起こります。他に、頭痛が起こりやすくなります。

また、エネルギーが作れないので、怠くて動く元気がなく、頭も働きません。

こんな時は、自分の好きなことならできますが、新しいことや難しいことはできません。勉強もはかどりませんし、何か頭を使って頑張ってやるようなことはできなくなります。

副腎ホルモンは、睡眠モードから活動モードへ切り替えるために、起床時に一番多く作られ、夜にかけて次第に量が減っていきます。

副腎疲労症候群を起こしていると、朝にしっかりした量の副腎ホルモンが出ないため、起きられない、だるい、頭痛、腹痛、理由のない緊張感や不安になるなどの症状が朝に出やすくなります

➡︎【慢性疲労・不登校の原因】ストレス対応ホルモンの不足とは?

➡︎「ストレス対応ホルモンの不足」なぜ起こる?【だるさ・不登校の根本原因】

診断するための検査はあるの?

副腎疲労症候群の検査や治療は、保険適応となっていませんので、一般の保険診療を行う病院では、検査や治療を行えません。以下の検査は、自由診療のクリニックで行っています(自費の検査・治療です)。

唾液で副腎ホルモンの日内変動を見る検査や、24時間蓄尿検査で副腎ホルモンと関連するホルモンの産生量とその代謝を見ることができます。

特に大事なのが、副腎疲労症候群を起こしている原因を調べることです。
原因を調べて、その原因を取り除いていくことが治療のメインになります。

副腎疲労症候群を起こしている原因を調べる検査として、以下のようなものがあります。

  • 栄養状態やエネルギー産生の異常や腸内環境の状態その他を調べる尿検査(尿中有機酸検査)
  • 尿で有害化学物質や有害重金属、その他の毒素などの影響を調べる検査
  • 腸内細菌の異常がないか、消化酵素がしっかり足りているかをみる便検査
  • さらに、細菌感染やウイルス感染による影響がないかを調べる検査

お子さんにより、必要な検査が異なりますので、お話をお聞きし診察した上で、必要な検査をご提案します。ご相談の上、検査を進めていきます。

治療はどんなことをするの?

食事療法が大事です。血糖の変動を激しくするジュースやお菓子は極力少なくします。また、腸が荒れている(腸漏れ症候群)がある場合は、小麦製品・乳製品も極力少なくします。小麦製品の代わりに、お米や米粉でできたパンや麺を、牛乳は豆乳などで代替えします。

ストレス源をできるだけ減らし、早寝早起きなど、生活習慣を整えます。適度な運動をするのが望ましいですが、病状によって、休養を優先する場合も多いです。

軽症のうちはお食事と生活習慣を変えるだけで、回復してしまうお子さんもいます。

食事や生活習慣を変えてもなかなか回復しない場合や、受験に向けて早く回復させたい場合などは、検査を行った上で、下記のようなアプローチで治療を進めていきます。

腸の状態が悪い場合は、善玉菌を補給したり、検査で悪玉菌が多い結果が出た場合は腸内細菌のバランスを調整する治療を行います。

体を動かすエネルギーをうまく作り出せない状態の場合は、効率よくエネルギー産生をできるように栄養素を補助し、同時にエネルギー産生を妨げている原因を除去していく治療をします。

具体的には、検査結果で判明した不足しているビタミンやミネラル等を補助して効率よくエネルギーを作り出せるようにします。
(胃腸の働きが低下して、食欲低下や食べていても食べ物の消化吸収の機能が落ちて栄養不足となっている場合が多いため、サプリメントで栄養素の補給が重要になります。)

有害金属や化学物質・その他の毒素が、体内炎症の原因となっていたり、エネルギー産生を邪魔している場合は、毒素を排出しやすくする治療をサプリメントで行います。

感染症が関与している場合は、こちらへのアプローチも行います。

学校への登校は?

副腎疲労症候群の原因は、積み重なったストレスなのでストレス源を減らすことが必要です。

無理に登校を促すことは、元気を取り戻すまでの期間をより長引かせることになります。

良くなってくると、少し体が動くようになって、自分の興味のあるやりたいことをやるようになります。

吐き気や胃の痛みがだんだん減ってきて、エネルギー源となる食事の量も増えてきます。

朝起きるのが大変だったのが、少しずつ起きられるようになってきます。

少しずつ外に出かける元気も出てきて、短時間の外出ができるようになってきます。外出すると疲れが出て、帰宅後に横になったり、翌日はあまり動けないなどとなることがありますが、これを繰り返すことで、だんだん筋力・持久力がついてきます。

お子さん本人も、動けることや、少しずつやれることが増えてきて、自分に自信がついてきます。

気持ちも落ち着いてきて、イライラしたり、理由なく気持ちが落ち込むこともなくなってきます。体が改善してくるとともに、次第にお子さん本来の性格が戻ってきます。

そのお子さんの重症度にもよりますが、上記の過程のなかで、家にばかりいてもつまらないからと、学校に行きたい気持ちが出てくることが多いです。

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