定規の目盛りが読めない【原因・対処法】

「どれだけ練習してもメモリを読むことができず、何度も練習するうちに、泣き出してしまう。」

「なんで目盛りを読めないの?、簡単なことなのに、何度も教えているのに…」

出来なさすぎてつい叱ってしまうことも。
その結果、子どもが自信をなくしてしまう、苦手意識を持ってしまう、気持ちが落ち込んでしまうなどの問題が…

定規の目盛りが読めないのには原因があります。
それらの原因に対処していくことで、読めるようになる、または、読みにくさが緩和されるお子さんがいます。

メモリが読めない原因と対処法

執筆者は、総合内科専門医の山根理子です。


目盛りが読むのが苦手な原因はいくつかありますが、この記事が解決のヒントになり、お子さん本来の力が発揮できるようになりましたら幸いです。


原因によっては治療法がありますので、原因を取り除き、お子さんが笑顔で学校での生活を楽しめるようになれたらいいですね。

定規のメモリが読めない原因として以下の原因が挙げられます。それぞれの対処法もお伝えします。

原因と対処法

  • ワーキングメモリ(超短期記憶・情報処理力)の低下
  • 視力以外の見る力が弱い(視機能)
  • 感染症による脳への影響(PANS/PANDAS)
  • カビ毒による脳への影響(マイコトキシン)

定規のメモリが読めない【原因と対処法】

小学生になると定規を使った授業が始まります。

小2 長さ(★単位cm,mm,mの意味 ,読み方 ,書き方 ,測定)
小3 小数・分数を数直線上に表す
その後も定規を使う授業はたびたびあります。

問題にメモリの数直線が書いてあり、そのメモリが幾つにあたるか読み取る問題も出たりします。

「1センチ=10ミリもわかっているし、1センチが10に分かれている事もわかっていてもミリが読めませんでした。」
とおっしゃる親御さんもいます。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

脳の記憶力や情報処理力の低下
 ↓
・ 感染症による脳機能への影響(PANS)
・腸内細菌のアンバランスによる脳機能への影響
・カビ毒による脳機能への悪影響
・その他

細かい線の並びが見えずらい
 ↓
・(視力以外の)見る力が弱い
・カビ毒の脳機能への悪影響

ワーキングメモリー(超短期の記憶力・情報処理力)の低下

ワーキングメモリとは、
物事をやり遂げるために得た情報を、
数秒~1分程度記憶し、
同時にその情報を分析・判断して行動する能力
のことです。

数秒〜1分程度のすごく短い一時的に記憶し、それを考えて適切に処理する脳の機能です。

同時にいらない情報を捨てるという作業を行っています。

そのため、「脳のメモ帳」とも言われます。

より長く記憶を保つ「短期記憶」「長期記憶」とは違う能力です。

ワーキングメモリが弱いと、
一度に複数の物事をこなせない、
物事を最後までやりきれない

などが起こり得ます。

ですので、定規の目盛りを読むときに、

〇センチ〇ミリという長さの場合、
ミリを数えているうちに、何センチだったかを忘れてしまって、
正解まで辿り着けない

ということが起こってきます。

対策としては、
まず〇センチまで測ったら、〇センチをノートに先に書き留めておき、
続けて、〇ミリを測り、〇ミリを書き加える

とすると良いです。この作業は、少しお子さんと練習していくとできるようになります。

ワーキングメモリが弱くなる原因が、いくつかあります。
・腸内細菌の乱れ
・感染症による影響PANS
・環境毒素による影響(カビ毒、環境化学物質)
・その他

原因によってはワーキングメモリが改善する場合がありますので、この記事の治療法のところでご説明したいと思います。

視力以外の見る力が弱い(視機能)

「見る力」とは、学校検診で行われる視力検査だけでは判断できません。

一般の視力検査は5メートル先の一部が切れた輪がどこまで見えるかを検査しています。

5メートル先だけを見て過ごしているわけではないので、この視力検査が良い結果でも、「見る力全般が問題ない」というわけではないのです。

ですから、「視力が良い」という健診結果が出ていても、「見えにくい」と感じているお子さんたちがいるのです。
 
 私たちの目をカメラで例えると、
 オートフォーカスでピントを合わせ、
 右目と左目を連携させて動かし、
 明るさに合わせて瞳孔の大きさ(しぼり)を変えて
 物を見ています。

1.遠視

遠視のお子さんは近くはピントがうまく会いません。 

遠視が弱い場合、視力は1.0以上、時には1.5~2.0のこともあり、確かによく見えます。

しかし、ある一定限度以上の遠視ですと、

遠くは見えても近くを見る時は目に無理がかかり疲れやすく、読書嫌い、勉強嫌いになったり、行(ぎょう)を飛ばして本を読むことから、注意力散漫な子と勘違いされてしまうことがあります。

遠くよりも近くが見にくいのが遠視の特徴です。

これは遠くが見にくく、近くが見やすい近視とは全く正反対の現象です。

学校の検診は遠くを見る視力しか検査しませんので、遠くを見る視力が良好であるとメガネは不要と思われがちです。

しかし、遠視の子供さんがメガネを使用すると、近くが楽に無理なく見えるため本が読みやすくなったり、勉強の能率があがったりすることがあります。

2.寄り目(輻輳)が苦手 

両目を寄せて、近くの物差しのメモリにフォーカス(焦点)を合わせます。

寄り目にさせること(輻輳)が苦手だとよく見えません。

対策は、ビジョントレーニングです。

キャラクターのついたボールペンなどを、お子さんの目の高さで顔から30cm離れたところから目と目の間に向けてゆっくり近づけていきます。

しっかり両目が寄っているかどうかと、二重に見えていないかを確認します。

目が寄らなくなったところから徐々に離していき、離れていく間も目がしっかりついてくるかを確認してください。
(近くのものや手元の方を見る時は目が寄って、遠くのものを見るときは離れていきます。)

3.じっと1点を見つめ続ける(注視)のが苦手 

目盛りを見るのが苦手なお子さんは、同じ場所に目玉を留めておくのが難しいです。

じーっと同じ一ヶ所を見続けようとしても、微妙に視点が動いてしまって、文字が揺れるようにめてしまう場合があります。(注視が苦手)

4.目玉をスライドさせて物を見る(追視)のが苦手

目盛りを読むために右から左へとゆっくり目を動かしていく(追視)のが苦手なお子さんもいます。

対策はビジョントレーニングで、ギザギザやクネクネやグルグルに書かれた線を、指でなぞっていくなどの練習をします。

5.飛び飛びに視線をジャンプして見る(跳躍)のが苦手

メモリを0、5、10、と飛ばして読んでいくことが苦手な場合です。

これには目玉を素早く動かして、見えたものの中から、正確に、自分が必要な部分だけの情報を得るために必要な能力です。

あっちを見てこっちを見ての視線のジャンプが苦手だと、定規のメモリを読む以外に、

  • 字の書き写し
  • 黒板を写して書く板書
  • 筆算で繰り上がり繰り下がりなどで上下に目を動かすこと
  • 分数の掛け算の約分

などが苦手になります。

対策は、2つの並んだ絵の中の間違い探しです。

2つの絵をあっち、こっちと目玉を何回も動かすことが、跳躍の目の動きの訓練になります。

2つの並んだ絵の中から間違い探しをするのが苦手なお子さんは、視線のジャンプが苦手である可能性があります。

6.赤ちゃんの時の反射が残っている(原始反射の残存)

さらに、メモリを読むために目を右から左へ動かしていく途中、自分の中央(正中線)を視線が通り過ぎていくのが苦手な場合もあります。

左目中心から右目中心へ切り替える瞬間に乱れが出て視線ががたつきます。

対策は、正中線を超えてするような運動をたくさんすると良いです。

空中で8の字を横に書くような運動をしたり、右手と左足、左手と右足を体の前後で交互にくっつける運動をすると良いです。

感染症による影響(PANS/PANDAS)

一部のお子さんは、風邪などのウイルス感染や、溶連菌、まインフルエンザウイルス、コロナウイルス、マイコプラズマなどの感染症の後に、学習障害のような症状を起こしてくる場合があります。

PANS/PANDAS(パンス/パンダス)という疾患です。

PANDAS(パンダス 連鎖球菌感染症に関連する小児自己免疫性精神神経障害)は、A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)の感染後に発症します。

PANS(パンス 小児急性発症神経精神症候群)は、溶連菌以外の感染症の後に発症します。

この疾患は、免疫の誤作動が起こり、正常な脳の一部に炎症を起こすことで次のような症状が出ます。

  • 不安感
  • 性格の変化
  • 強迫神経症のような症状(自分で「やりすぎ」とわかっていても手洗いをやめられない、何度も戸締りの確認をしてしまうなど)、
  • 感覚過敏
  • スキル・能力を失う

学習障害に関する症状としては、以下のようなものがあります。今までできていたことが、できなくなる、ある時から今まではみられなかった症状が出始めるというのが特徴です。

・数学の能力の喪失
・手書き能力の低下(dysgraphia)
・細かい運動ができなくなる
・集中力の低下
・短期記憶力の低下
・ワーキングメモリの低下(情報の一時記憶ができない)

上記の症状がみられてくるため、細かい目盛りを集中して読んだり、ワーキングメモリの低下のため◯cmを一時記憶しながら◯mmを読んでいくのが難しくなります。

幼稚園の時に発症した場合は、メモリを読むことを経験していないため(そのような学習機会がない)、メモリを読む小学生になった時に初めて気づく場合もあるでしょう(今までできていたかどうか確認できない場合もあるかもしれません)。

PANS/PANDASは、早期の治療で改善がみられる場合があります。

PANS/PANDASは炎症により、副腎疲労を起こしています。

回復のためには、まずは、食事と生活習慣・生活環境をしっかり整えていただくことが大切です。

その上で、検査で問題となっている部分を明らかにして、副腎疲労とPANS・PANDASの専門的な治療をしていきます。

カビ毒(マイコトキシン)

ある種のカビは人に健康被害をもたらす有害な化学物質を作り出します。それがカビ毒(マイコトキシン)です。

カビ毒は、体の発電システム(ミトコンドリア)の働きを障害したり、免疫機能異常や炎症を起こしてきます。

カビ毒は、加熱や乾燥、圧縮などでは分解されません。つまり、カビが死滅した後でもカビ毒は残存するのです。

子どもは、体重が低く、代謝率が高く、臓器機能と解毒機能が未発達であるため、カビ毒の影響を受けやすくなります。

ミトコンドリア機能が傷害されると、コンピューター役の脳の電源が電力不足となるので脳の機能が低下します。

マイコトキシン(カビ毒)は、直接的な悪影響と、免疫を介して脳神経系に影響を与える可能性があり、発達障害(ASD)を含む神経発達障害に関与します。

マイコトキシンへの曝露とASD(発達障害)の間には有意な関連性があると、最近の疫学研究で示されています。

カビ毒は学習障害の原因にもなります。

  • 漢字がうまく書けない、
  • 「b」と「d」や「p」と「q」の区別がつかない、
  • 文章を一行読み飛ばしてしまう、
  • 物差しのメモリが読めない、
  • 筆算で行がずれる・小数点がずれてしまうなどのために計算ができない、

などの症状が出ます。

本人がどんなに一生懸命に努力しても、カビ毒の体内蓄積量が多いお子さんは上手くできません。

対策はまずは原因となるものを体に入れないようにすることです。

カビ毒はカビとは異なり、見た目で確認できません。

また、無味無臭であり、畑での植物の生育中や輸送・貯蔵中に発生することもあります。

この毒素は主に、穀物(トウモロコシ、小麦など)やそれらを原料とする製品、ドライフルーツ、ナッツ、乾燥スパイスなどから検出されます。

食べ物以外でも、浴室、冷蔵庫、洗濯機、押し入れの中なども、カビ毒の発生源となる可能性があります。特にエアコンのカビは、原因としてとても多いです。

食べ物以外のカビの原因となるモノへのこまめなメンテナンスをするのも大事です。梅雨時は除湿機の使用も良いでしょう。

体に入ってしまった有害化学物質やカビ毒などの毒素は、積極的に排出させましょう。体からの毒素の排出経路は、便、尿、汗です。

一番毒素の排出量が多いのは便です。ですので、便は毎日出るようにさせたいです。

毒素は肝臓で処理され腸内に排出された後、便とともに体外に捨てられます。
便が長く腸内に留まると、腸に排出された毒素が血液中に再吸収されてしまいます。

次に多く排出されるのは尿です。水分を多く摂り、尿へ毒素をどんどん出していきましょう。

人により、毒素の排出が苦手で溜まりやすい体質であったり、生まれた時から多めに体に溜まっているお子さん、生まれた後の生活で毒素が多く入ってしまったお子さんなど、毒素の影響、蓄積量が異なります。

症状が強い場合は、弱った解毒機能をサポートする治療や毒素を効率よく排出する治療を行うこともあります。

まとめ

メモリがうまく読めない、読み取れない原因はいくつかあります。

それぞれの原因に合わせた対応をすることにより、メモリが読めないことをはじめ学習障害の程度が軽くなり、お子さん本来の力を出せるようになる場合があります。

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