合格したのに不登校、中学受験後の不登校、入学後すぐの不登校【なぜ?どうしたらいい?対策は?】
せっかく私立中学に入学できたのに不登校に…
学校が合わなかったのかしら?
第一志望の学校じゃなかったから、行く気にならないのかも…
鬱になってしまったのかしら?
どうしてなの?
学校に行かない理由が分からない…
本人にいくら理由を聞いても、本人自身も理由が思いつかないって…
このような状態でお心を痛めている親御さんに向けて、この記事を書いています。
執筆者は、総合内科専門医の山根理子です。
実際に体の具合が悪いのに、一般の病院の検査では異常が現れない(見つけられない)場合があります。
この記事では、検査で異常なしの結果でも、実は体の機能の異常があるために、
- 朝起きられない
- 気力が出ない
- めまい
- 原因がはっきりしない頭痛、吐き気、腹痛
などの症状が起こる原因についてお伝えしていきます。
慢性疲労外来で不登校のお子さんの治療にもあたっていますので、その経験も織り交ぜてお伝えしますね。
親御さんとしては光の見えないトンネルに入ってしまったかのようなお気持ちになっていらっしゃるかもしれません。
「温かく見守ることが重要というのはわかっているけど、他に何かできることはないの?」
とお悩みの親御さんに、お子さんの回復に向けてこの記事がお役に立ちましたら幸いです。
ストレス過多で起こる副腎疲労
受験はご家族もサポートで大変ですが、ご本人には長期に非常に大きな精神的なストレスがかかります。そして、受験日が近づくにつれてストレスの強度がどんどん増していきます。
ところで、ストレスにうまく対応するためのホルモンがるのをご存知ですか?
ストレスに対応するホルモン???
そんなホルモンあるの?
気合いで乗り切っているんじゃないの?
とお思いになるかもしれません。
ですが、私たちの体には
ストレスに打ち勝ってなんとか困難な状況を切り抜ける…
「ストレス対応ホルモン」があります。
それは副腎という臓器で作られる副腎ホルモン(コルチゾール)です。
このストレス対応ホルモンですが、
慢性的にストレスが長期にわたって続くと、枯渇してしまう、在庫切れしてしまうことがあるんです。
また、ストレスの数が多すぎても、ストレスの量に見合うだけのストレス対応ホルモンを作り出せない場合もあります。
そうすると、
- 朝起きられない
- だるくて動けない
- 元気が出ない
- 頭痛、腹痛、吐き気が起こりやすい
- やる気が起きない
- 緊張しやすくなる
- キレやすくなる
- 夜眠れなくなる
- 低血糖を起こしやすくなる
などの症状が起こってきます。
このような症状のせいで、だんだん学校に行けなきなってきます。
「副腎疲労」という状態です。
「副腎疲労」は、病院の一般検査では、異常が出ません。
ですので、副腎疲労を起こしているために、実際は学校に行けなくなっていても分からないことがほとんどです。
これからご説明するような色々なストレスが重なって、ストレス対応ホルモンが必要な量だけ体内で作れないために学校に行けなくなっている場合があります。
お子さんに下記のようなストレスはかかっていませんか?
受験には精神的なストレスが相当かかりますが、精神的なストレス以外のストレスもある点にもご注目くださいね。
受験生にかかるストレスとは
受験生にかかるストレスとはどのようなものでしょうか?
(受験までにかかったストレス)
- 精神的なストレス、重圧、極度の緊張感
- 過労など体力的なストレス
- 睡眠不足・睡眠の質の低下
- 栄養不良(コンビニ食、不規則な食事)
- 腸内環境の悪化(ストレスによる悪玉菌の増加・リーキーガット症候群など)
- 運動不足による筋肉量の低下(ミトコンドリア低下)
- 日光に当たる時間が少なくビタミンDの低下
(受験後に起きたストレス)
- 新生活・新しい環境に適応するための気疲れ、緊張
- 進級に伴う授業の長時間化・学習内容の難化
- 遠方への通学・部活等での過労
- インフル、コロナ流行による消耗
- 学校の施設環境が合わない(シックスクール症候群)
では、それぞれのストレスについて説明していきますね。
(受験までにかかったストレス)
精神的なストレス、重圧、極度の緊張感
受験塾によっては、毎月成績順にクラス分けされる塾もあります。どんなに頑張っても成績が上がらない、順位が下がっていくなどの状態になることもあります。
親御さんからの期待がプレッシャーになることもあるようです。
受験日が近づくにつれて、このストレスはどんどん大きくなっていきます。逃げたくても逃げられない、合格できるか不安になる、気持ちが押しつぶされそうになるなどの状態の中、何とかこらえて頑張っています。
過労など体力的なストレス
学校を終えてから塾へ出かけ、夜遅い時間の帰宅、帰宅してからさらに勉強するなど過酷なスケジュールです。
限られた時間の中での競争となるため、少しでも勉強の時間を確保する必要が出てきます。
そのため、1時間かけてしていたことを30分でこなすなど、1日の中で10の作業をして暮らしていたところ、15の作業を詰め込んで勉強量を増やしているような場合もあるでしょう。
睡眠不足・睡眠の質の低下
勉強時間の確保のために睡眠時間を減らしているお子さんもいます。
また、成績が伸びず思い悩んだり受かるかどうかの不安などがあって、熟睡できなくなる場合もあります。
睡眠は体の修復、免疫アップ、脳の老廃物の除去などには非常に重要なため、睡眠時間や睡眠の質の問題は体にとって大きなストレスとなります。
栄養不良(コンビニ食、不規則な食事)
朝は少しでも長く眠っていたいからと、朝ご飯を食べずに登校するお子さんも多いです。
また、夕方から夜8時頃まで塾で勉強するような場合、夕食や捕食をコンビニ食で済ますお子さんもいます。
そうすると、お母さんの手作りの夕食と比べ、添加物の摂取量が多くなり、腸内細菌のバランスが乱れてしまい、その結果ミネラルの吸収が悪くなる場合もあります。
そのような場合、成長期で栄養をしっかり取らなくては行けない時期に栄養不良となってしまいます。
カロリーは足りていても、体作りや脳の成長、体の正常な機能を維持するのに必要なタンパク質やビタミン、ミネラルが不足した状態となります。
腸内環境の悪化(ストレスによるリーキーガット症候群など)
ストレスなどで胃酸などの消化酵素の分泌が減ることでも、腸内細菌のバランスが狂ってきます。
悪玉菌の増加により、リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)を起こし、それが体の負担となっている場合があります。
腸漏れ症候群とは、腸壁の細胞と細胞の間の接着が緩み穴が空くことでおこります。
腸内には、消化不良の食べ物、悪玉菌が作り出した有害物質、食品添加物などがあり、様々な毒素が存在しています。
本来は、このような入ってほしくない有害物質が入り込まないような腸壁構造となっていますが、
腸漏れを起こすと、これらの有害物質が腸壁を通り抜け血管内に入り込んでしまいます。
そうなると、腸内の有害物質が体中を巡り、流れ着いた先で炎症を起こします。
運動不足による筋肉量の低下(ミトコンドリア低下)
運動不足や食事で摂るタンパク質の量が減ると、体の筋肉量が減ってきます。そうすると、体内の発電所の役割をするミトコンドリアの量が減ってしまいます。
筋肉にはミトコンドリアが多く含まれるためです。
体の色々な部所へ送る電力量が少なくなり、停電モードや省エネモードとなり体の色々な機能が落ちてしまいます。
朝起きられない、気力がわかないなどの原因になります。
日光に当たらずビタミンD低下
受験勉強中は外で過ごす時間も減ってしまうため、日光に当たることで体内で合成されるビタミンD量が少なくなります。
ビタミンDは免疫機能を高めたり、心や神経のバランスを整える脳内物質セロトニンを調節するとも言われています。
(受験後に起きたストレス)
新しい環境に適応するための気疲れ、緊張
進学により、今までと違う場所、仲間と過ごすことへの期待やワクワク感があると同時に、新しい環境に適応するのには緊張したり、気疲れすることも多いです。
新しいルールなどにも慣れる必要があり、少なからずストレスが生じます。
進級に伴う授業の長時間化・学習内容の難化
「受験が終わったらゆっくり自由に遊べる、好きなことができると思っていたのに、違った。」
「受験後の春休みから、進学先の学校からの宿題が出て終わると思った勉強がまだ続くのかと、気力が切れてしまった。」
というお子さんがいます。
進学した学校の勉強の進度が早すぎて、続けて塾通いをしながら猛勉強をしなければついていけないなどの場合もあります。
通学・部活等で過労
遠方への通学で朝早くの登校、進級前より遅い時間の帰宅となる場合もあります。
部活動の朝練・放課後の練習があったり、夏は酷暑だったりすることで消耗が激しい場合もあります。
インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスなどの感染症による消耗
新型コロナウイルスの流行後は、色々な感染症が急激に増え、感染症にかかった影響で消耗する場合があります。
新型コロナウイルスにかかった自覚がないまま、新型コロナウイルス感染をしている場合もあり、そのような場合でも新型コロナウイルス後遺症が出ることもあります。
学校の環境が合わない(シックスクール症候群)
進学先の学校の施設的な問題が合わない場合があります。
新築の校舎やリフォームした施設の場合、新しい床材からの接着剤や塗料、防虫剤、その他の有害化学物質が揮発した空気を吸うことで体調が悪くなってしまう場合があります。
また、校庭に撒かれた除草剤や害虫駆除薬の揮発したものを吸うことで具合が悪くなるために登校できなくなるお子さんもいます。
シックハウス症候群と同じ状態が、学校でも起こっており、シックスクール症候群として文部科学省も注意喚起をしています。
これらの色々な因子がお子さんのお体の負担(ストレス源)となり、ストレス対応ホルモンが枯渇して「副腎疲労」を起こしてくる場合があります。
学校が合わなかったのではなく、「副腎疲労」を起こしているせいで、学校に行けなくなっているお子さんが多くいます。
ではどうしたら「副腎疲労」から脱することができるのでしょうか?
軽症の場合は、食事と生活習慣の改善を3ヶ月くらい続けるとまた登校できるようになるお子さんがいらっしゃいます。
どうしたらいい?対策は?
副腎疲労への対策で、お家でできる対策としては、まずは「食事の改善」と「生活習慣の改善」です。
食事の改善で、栄養不足を補い、腸内環境を良好な状態へ変えていきます。
生活習慣の改善では、睡眠時間を確保してさらに睡眠の質も改善させます。
また、生活の中で、体の負担になるような有害化学物質が体に入ってこないようにする、そして入ってしまったものは積極的に排除させていきます。
具体的には、次のような点に注意していただきます。
食事療法としては
- 血糖が急激に変化しやすい甘いお菓子やジュースを控える
- 小麦製品・乳製品を極力少なくする(腸漏れ症候群を起こす要因となるため)
- できるだけ加工食品(添加物・防腐剤など)は減らす
生活環境を整えるとは、
- 寝室のクローゼットにクリーニング後の洋服や防虫剤を置かない
- リビングやトイレに芳香剤は置かない
- 香り付き柔軟剤の使用は控える
- 新品のマットや家具は揮発性の有害物質を外に置いて飛ばしてから使う
などです。
現代のお子さんは、知らず知らずのうちに上記のいろいろなストレスが重なって副腎疲労を起こしています。
できるところから、精神的なストレスをはじめ、それ以外のストレスを減らしていってあげたいです。
※以下の記事に、副腎疲労でよくみられる症状や特徴、「なぜ学校に行けなくなってくるのか」を、分かりやすくご説明しています。
➡︎【慢性疲労・不登校の原因】ストレス対応ホルモンの不足とは?
➡︎「ストレス対応ホルモンの不足」なぜ起こる?【だるさ・不登校の根本原因】
まとめ
このように、受験後に学校に行けなくなってしまう原因の中に、「副腎疲労」という病態があります。
「副腎疲労」は、病院の検査では異常が出ないため、甘えている、仮病ではないか、精神的な問題ではないかと誤解されやすいです。
また、「副腎疲労」は朝に症状が悪くなり、午後になると症状が軽くなってきて、夜に「明日は学校に行けるかも」と思うくらいに症状が楽になります。
お子さんからこのような言葉が出たのに翌日の朝になると登校できないということはよくあります。
お子さん自身はいい加減な気持ちで、そのようなことを言っているわけではありません。
お子さんとしては、具合が悪いのに検査でも異常が出ないため、どう説明して良いか分かりません。
気力も出ない状態なので、非常に追い詰められたお気持ちになっていることが多いです。
ぜひこのような原因があることも知っていただけたらと思います。
食べ物や生活用品が、お体の負担となっていて「副腎疲労」をより起こしやすくなっている場合が多く見られます。
ぜひ、お子さんが笑顔でやりたいことに色々挑戦し、リアルな体験を楽しむ時間を過ごせるようになることを願っています。
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